「サー」

今日は書かないつもりだったが、思い出したので。
オリンピックで、卓球の福原愛が口走るかけ声が話題になっていた。
「あれは何と言っているのか」
「どういう意味なのか」
と、取り沙汰され、色々な説が飛び交っていた。
オリンピックが終わると、結局うやむやのまま人々の記憶から消えていった様だが。


私は中学の時、卓球をやっていた。
その経験からいうと、あれは卓球では非常にありふれたかけ声なのだ。
文字にすると、
「サーッ」
というのが近いだろうか。ニュアンスは人によって違い、
「サッ」
と短く切る人もいる。
具体的には、試合中に多用される。
自分に気合いを入れるかけ声であり、
又、プレイ開始の合図でもある。
サーブを出す側が「サーッ」というと、
相手も「サーッ」と答え、そしてプレイが始まる。
この場合、前者の「サー」は「いくぞ」であり、
後者の「サー」は「よし来い」である。
これは、誰が教えるともなく、先輩がやるのを見て、
そのまま何の疑問もなく我々もやっていた。
卓球ではごくごく普通の慣習なのだ。
(外国人選手はやっていないようなので、国内だけのものらしい)

だから、オリンピックで話題になったとき、逆に驚いた。
話題になる様な、一般の人に違和感をもたれるものだとは、
全く思っていなかったからだ。
一度でも卓球のちゃんとした試合を見た人なら、とっくに知っていただろう。
つまり、それだけ卓球の試合を見たことがない人が多かった、という事だ。
日本選手権個人戦決勝は、毎年NHKで中継していたのに。
オリンピックだって、今回が初めてではない。それなのに、かけ声がこんなに話題になるとは。
どれだけ卓球がマイナーな存在かを、改めて証明してくれた。


逆に言えば、それだけ、今まで卓球に縁のなかった人にも
目を向けさせる事に彼女は成功したわけである。
一般性を持ったスターがいなかった日本卓球界では救世主扱いされるのも無理はない。
今後の動きが注目される所だろう。
過去に多少卓球に関わった人間として、陰ながら見守りたいものだ。