「Niagara CD Book I」「A Long Vacation 30th Edition」購入


70年代Niagaraの総決算、12枚組CDBOX「Niagara CD Book I」と、
ロンバケ30周年記念盤」を購入する。


そもそも私は、Niagara=大滝詠一とは少し特殊な出会い方をしている。
初めて聴いたのは、友人が買ってきた「Niagara Black Vox」である。
(友人は'85年のはっぴいえんど再結成に触発されて買ったらしい)
それ以前、「さらばシベリア鉄道」なんかはラジオで聴いたことがあったが、
大滝詠一」という名を意識した上で聴いたのはこれが最初だった。
(大体、「レコードを聴く」という行為自体、まだ始めたばかりの中学3年生だった)
つまり、大滝詠一本体のソロアルバムを聴く前に、このある種偏った作品群にぶつかってしまった。
ロンバケ」を聴く前に、「多羅尾伴内楽団vol.1」「同vol.2」や「レッツオンドアゲン」を聴いてしまったのだ。
作品発表順の時系列としては合っているが、'81年以降の出会い方としては異例だろう。
一切その前後の文脈も判らず、この異物をいきなり目の前に出された無知な中学3年生の当惑を想像してみて欲しい。
その後、別な友人経由ではっぴいえんどの音を聴かされ、この周辺の音に傾倒していくこととなるが、
それがなかったら異様な体験として記憶するに留まっただろう。


私がNiagaraを聴き始めた80年代後半というのは、'70年代Niagaraの作品群が入手しづらい状況になっていた。
やたらリマスター盤が出まくる昨今では想像しにくいが、
LPは廃盤、CDは値段が高い上に田舎には余り出回らない、高校生にはつらい状況だった。
そういう状況下では、異物だったBlackVoxは逆に有り難い宝物となった。
というわけでこの偏った作品群が私の'70年代Niagara体験の全てだった時期が長く続く事となり、
本丸であるはずの大滝ソロ、「Moon」や「Go!Go!Niagara」などに辿り着くのは実に1992年までずれ込むこととなる。


というわけで、今回のCDBookに含まれる内、「BlackVox」に収録されていた5作品には個人的な思い出がある。

特に「Debut」。このCDを聴いて、タイムスリップしたような感覚に襲われた。
他の4作品は以前再発された時点でそれぞれ聴いているから、特に特定の年代を感じないのだが、
これは今までオリジナルの形では一度もCD化されたことがない。聴くのも実に久しぶりである。
それ故、1985年に私が最初に聴いた時の記憶、中学3年生という、最も多感だった時期の空気感までもがアルバムそのものに固着しているのだ。


又、先に書いたとおり、70年代大滝ソロアルバムの曲はこれでしか聴けない時期が長かったため、これに収録されたリメイク版が「私の中でのオリジナル版」化してしまっている事にも気付いた。
「恋はメレンゲ」はイントロ無しでいきなり歌、「ウララカ」は早回しコーラス、「あの娘に御用心」もアップテンポ。
ソロアルバム聴いて今でも違和感あるのには、こんな所に理由があったのかと、やっと合点がいった。
全ては「Debut」が自分内オリジンとなってしまったせいである。有り難う「Debut」、「やっつけ仕事」(by大滝詠一)のベスト盤「Debut」。
私は君をきっと忘れないだろう、忘れたくても。