DVD「キサラギ」プレミアムエディション購入

9月に大絶賛した映画「キサラギ」のDVDを購入。

私が買った店では、当初「『キサラギ』初回版は商品を持たずにレジで注文して下さい」との注意書きがあったが、
私がそのようにして買ったあと、その注意書きを店員が外していた。
つまりレジ奥の在庫がなくなったという事。
もしかして売れているのだろうか。
口コミでヒットしたとは言え、ミニシアターレベルの公開規模だったのに。
元旦には、テレ東深夜枠で5分間のDVD発売告知番組も流され、
店頭ではPVを流す宣伝ディスプレイもされていて、ただただ驚きである。


今回わざわざDVDを買ったのは、例の如月ミキ「ラブレターはそのままに」の
オタコール入りヴァージョンが欲しいと思ったからだった。
前記の記録に書いた通り、私がこの映画を見たきっかけは
YouTubeでこの曲の映像を見たからだ。
(この映像を見て、「これは何としても映画を見なければ」と思ったのだった)


ここには映画のエンドテロップと共に所謂「オタコール」が入っている。


映画のサントラには、コールのない純粋な楽曲が入っていた。

キサラギ オリジナル・サウンド・トラック

キサラギ オリジナル・サウンド・トラック

ところが、これでは何か物足りないのだ。
最初に聴いたのがコール入りだったからなのかも知れないが、
歌の合間が間延びしているように感じてしまう。
「アイドルの楽曲」ということで、初めからコールが入るのを想定して作られた可能性もある。
が、それにしても特にこの曲に関しては、「オタコールが入って初めて完成」するように思える。


元来、アイドル歌謡とは、そういった性質のものなのかも知れない。
アイドルに求められるのは、ファンがいかに感情移入出来るかどうか。
そこでは「歌の上手さ」「楽曲の出来の良さ」は、必要条件ではない。
例えば80年代の女性アイドルの楽曲を聴くとき、現在の我々はどうしてもレコード音源で聴くしかないが、
本来これらの楽曲は、ファンを目の前にして歌う為に前提に作られたもの。
そこでは、言わばファンとアイドルが交歓するための「ツール」としての機能が最重要であり、
そういった交歓の「場」でこそ、最大限に発揮されるものだったのかも知れない。
そのひとつが、「オタコール」。
歌を補完する形で一体化して機能する、文字通り「コール&レスポンス」である。
こうなると、もはや歌であって歌ではなく、
むしろ、アイドルとファンとの交歓の記録なのだ。
歌の巧拙は、ここでは関係ない。


記録される類のものではないので、今となっては詳細は判らないが、
80年代アイドルの「現場」でも、こういった事は起こっていたのかも知れない。
静的な場での「鑑賞」では判らない部分がある事を、後世の我々は肝に銘じて、
過去のアイドル歌謡を「聴く」必要がありそうだと、
「ラブレターはそのままに」のCD音源と映画の音源を聞き比べて思ったのであった。


DVD初回特典盤に収録されているメイキング映像には、
主演5人が密室で3週間、集中撮影する姿が収められていた。
長台詞に四苦八苦し、撮影合間に冗談ばかり言って大笑いし、
暑さと戦い、真剣に打ち合わせしつつ吹き出すのをこらえて。
それは部活の夏合宿の様であり、出来上がった映画は「合宿の成果発表」とも言える。
5人はインタビューで「非常につらかったが非常に楽しかった」と異口同音に言う。
彼らは、言ってみれば同じ戦場を戦い抜いた「戦友」なのだろう。


そしてこの映画は、何よりも「あなた」の為の映画なのだ。
何かに夢中になったことのある「あなた」、一般に「おたく」と言われる類の「あなた」へ、
その夢中になった対象からの、嬉しくもあり悲しくもある返礼。
夢中になった経験がある人なら、それが「報われる」事がどれだけ幸せな事か、痛いほど判るだろうし、
この映画の主人公の気持ちが我が身のことのように感じられるだろう。