さようなら、ドラえもん

現行キャスト降板が、いよいよ間近に近付いてきた。
明日11日の放送が、通常放送では最終、
その後2回はスペシャル番組となっている。
テレビ朝日ドラえもん公式サイト
キャストだけでなく、スタッフも総入れ替えだそうなので、
実質全く新しい番組になる、と言っていい。


一介のアニメ番組のキャスト降板が発表されて、これだけ賛否両論が巻き起こったのも珍しい。
それだけ一般レベルでドラえもんが浸透している証拠だろう。
多少の視聴率低下があっても、
これだけの安定したドル箱コンテンツを手放したくないのも無理はない。
個人的には円満な番組終了を望むが、「ドラえもん産業」となった今、それは出来ない事なのだろう。


昭和40年代半ば生まれの我々の世代は、小学生時代に
ドラえもんが沢山載っている雑誌」コロコロコミックの創刊に出会い、
「テレ朝でのドラえもんアニメ化・大ヒット」
「『のび太の恐竜』映画化・以降定例化」と、順々に洗礼を受けた。
常に空気のようにドラえもんはそばにいた。
私はドラえもんの単行本を1冊も持っていないのに、多くの話を知っている事が、
どれだけ浸透していたかを物語っている。自分で持っていなくても、誰かが持っていた。
好き嫌いの枠を超えて、ドラえもんはもう「国民的常識」と化している。
そして、「ドラえもん=大山のぶ代」の図式は、アニメの半世紀に渡る放送で、
あまねく広がり、抜き難く定着してしまった。
0系ひかりの時も書いたとおり、これはもはや「刷り込み」だ。
次にどれだけうまい声優が来ても、頭で判っても身体が受け付けないだろう。
(日テレ版の富田耕生が刷り込まれて、大山のぶ代に未だに違和感を思える人もいるそうだ)


しかし、本来学年誌での連載だったことでも判るように、
基本的に読者は子供なのである。
我々過去に囚われざるを得ない大人より、
過去を知らない子供達にこそ、ドラえもんは開かれているものなのだ。
今後の子供達に、今度の新番組(あえてこう言おう)「ドラえもん」はどう映るのか。
子供の目は容赦ない。すれっからしの大人が諦める所も、子供は遠慮なく突っ込む。
子供番組とは、もっとも厳しい視聴者層を相手にしなければならない、大変なコンテンツである。
子供をだます為には「子供だまし」では到底通用しないのだ。
製作者側の見識が問われる。


願わくは、短絡的な「視聴率てこ入れ」レベルの思惑は捨てて欲しい。
誰もが思うのは、山田康雄氏が亡くなった時の「ルパン三世」声優のドタバタ。
あれでは栗田貫一が気の毒。殆どさらし者である。
彼は本業での重要な持ちネタが一つ、使えなくなってしまった。
今回のキャスト総入れ替え自体、「ルパン」を他山の石にしているのだと思うが、
これは荒療治である。果たして、二度とやり直しの効かないこの機会を、
製作者サイドは有効に使えるだろうか?
4月以降の推移に注目したい。