Paul Simonソロアルバム紙ジャケ9枚、購入

「グレイスランド」までは通常盤で持っていたのだが、
今回リマスター&ボーナストラック&紙ジャケ仕様ということで、
思い切って買ってしまった。紙ジャケなんてどうせ初回限定。
これを逃せば手に入らない。


私がギターを始めた動機はポール・サイモンである。
ポール・サイモンになりたくて、ギターを始めたのだ。
勿論S&Gから入ったのだが、ポール・サイモンのソロも又違った味があって好きだ。
様々な音楽要素が入り交じったポール・サイモンのソロアルバム。
S&Gのような華麗さはないので、大向こう受けはしないだろうが、
その分より荒削りで、生々しい音を聴く事が出来る。


この紙ジャケ自体の出来もよい。
ジャケットのみならず、帯も発売当時の物を再現(ただしCBSソニー時代のロゴはさすがに使えず、ワーナーロゴに差し替え)。
ボーナストラックも充実。
2003年リマスター音源を使っているので音もクリアで良い。


特筆すべきは、各アルバムにつき10ページ余りもの詳細な解説。
アルバムの制作状況、歌詞の意味、背景から音楽的要素、ギターのコード進行、奏法やチューニングまで言及。
それも、ライナーによくありがちな、勝手な思い込みの印象批評ではなく、
裏付けとしてポール・サイモン本人の発言を様々なインタビューから引用、
しかも引用にはきちんと全部出典が書かれている。
ここまで丁寧に作られたものはなかなかない。敬意と愛情に溢れた解説である。
署名は「檜山譲」となっているが、この名で検索しても何も出てこない。
同箇所に「ワーナーミュージックジャパン」と書かれているので、多分担当ディレクターと思われる。
S&Gファン掲示板で多分御本人のものであろう書き込みが見つかったので、
個人的にポール・サイモンファンであることは間違いあるまい。
担当者の熱意によって、プロダクトの完成度が左右される好例だろう。


先に書いたとおり、S&Gの華麗さを期待して聴くと面食らうか失望するかも知れない。
本人曰く「ファンキー」、勿論洗練された上の荒削りさなのだが、
逆説的に、S&Gの華麗な面はアートが担っていた事がよく判る。
アルバム毎に音が違うが、3rd「時の流れに」辺りが洗練されていて聞きやすいだろう。
2nd「ひとりごと」はアメリカ南部での録音が多く、最初に聴くと意外な泥臭さに驚くかもしれない。
(それでも「洗練された泥臭さ」なのだが)
アフリカ音楽を取り入れて話題騒然だった6th「グレイスランド」は言わずもがな。
多彩なリズムに身を任せよう。
今聴いてみると、世間のS&G再結成の期待を裏切った事で一番売れなかった5th「ハーツ&ボーンズ」が素晴らしい。
何といっても曲がいい。地味だが、味わい深い曲ばかり。
ボーナストラック「レイト・グレイト・ジョニー・エース」の弾き語りの、この上ない美しさ。


隠れた傑作として、アコースティック・ギターを弾いている人は一度は1st「ポール・サイモン」を聴いてみて欲しい。
アルバム全体がアコースティック・ギターの響きに満ちている。
オープンチューニング、ボトルネック、フィンガーピッキング、軽快なカッティングなどなど、
荒削り、大胆でいて繊細なアコースティック・ギターを堪能できる。
これは、言ってみればアコースティック・ギターのショーケースだ。
様々なアコースティック・ギターの可能性を見せてくれる。必聴だ。