WBC日本連覇

第2回WBCが終わった。
日本が第1回に続いて優勝、連覇を達成した。
事前に「連覇連覇」と騒がれていたが、実際に連覇できると思っていた人は殆どいなかっただろう。


手探り状態だった前回に比べ、どの国も力を入れてきた。
日本は監督選びの時点で右往左往し、
すったもんだのあげくに原辰徳氏に決定。
そのドタバタ振りに先が案じられた。
私は2/28の日本代表対西武との強化試合を見に行ったのだが、
2軍主体の西武が2対7で圧勝。
一緒に見に行った友人達と、
WBCディフェンディングチャンピオンである日本代表に勝った西武の2軍が、世界一なのでは」
と語り合った。


実際に始まってみれば、「事実は小説よりも奇なり」とは、まさに今回のWBC日本代表の為にあるような言葉。
東京ラウンド、韓国にコールド勝ちした2日後には、0対1で負け。
サンディエゴラウンド、164km/hピッチャーのチャップマンと強力打線が恐れられたキューバには完封勝ち。
決勝ラウンド進出を賭けて戦った韓国戦ではいいところなく負け、第1回に続いてマウンドに太極旗を立てられる。
しかし、後がない状況で戦ったキューバには再び完封勝ち。
韓国との順位決定戦では勝つが、「決勝ラウンドに向けてピッチャーを出し惜しみしただけ」と韓国側に言われる。


準決勝では前回の因縁の相手アメリカにも勝ち、決勝では5度目の韓国戦。
1点を争う屈指の好ゲームとなり、9回ツーアウトまで追い詰めながら韓国に追い付かれる。
そして10回表、大会中ずっと不振に喘いだイチローが、決勝タイムリーヒット


こんなにも劇的な決まり方ってあるだろうか。
9回裏にダルビッシュが韓国に同点を許してなければ、
(つまりすんなりと試合が終わっていれば)
10回表のイチローの劇的なタイムリーヒットはなかった。
この試合に関してはイチローは既に3安打していたが、
試合後の会見で「ずっと足を引っ張りっぱなしだったけど、最後においしいところを全部頂きました」と笑顔で言えたのは、
大会中の不振を全て吹き飛ばすような、この神がかり的な決勝タイムリーがあってこそ。
動画を見れば判るが、このイチローの打席だけで5分以上かかっている。
高速スライダー、150km/h以上のストレートで攻めに攻める林昌勇。
ファール、ファールで粘りに粘るイチロー
どちらにとっても名勝負と言えるだろう。
そして最後にセンター前に打球が飛んだ瞬間、日本全国で歓喜の声が上がったのは想像に難くない。


こんな、漫画のような展開、
書く前に「余りにも嘘くさいな」と思ってしまって、漫画でも書けないだろう。
それを実際に起こしてしまう辺りが、やはりスーパースターの証しなのか。
「神が降りてきた」という言葉が、本人の喜びと、僥倖に恵まれた震え、
そして最後の最後に結果を出せた解放感をよく表していた。


ピッチャーでは何と言っても岩隈だ。
3勝を挙げてMVPを取った松坂が
「岩隈に悪いな」
と言うくらいの大活躍。
何と言っても、負けたら後のない2度目のキューバ戦、そして決勝、
安定感抜群の投球を見せた。
去年21勝したのは伊達ではなかったところを、全国民に見せつけたと言っていい。
又、日本投手陣のWBC防御率は、1.71。
杉内なんて、6イニング1/3投げて、被安打すらゼロである。
改めて、日本の投手陣のレベルの高さを見せつけられた。


原監督は、巨人に入団した時から、比較対象されるのが「ON」(しかも好調時の)であった。
相手は何しろ伝説的、殆ど神話上の人物である。しかも、ONの活躍がまだ記憶に新しい1980年代。
その2人と比べられるのだから分が悪い。
十分に一流の成績を残しているのだが、「超一流じゃないから」とあれだけ叩かれた人もいないだろう。
本人のキャパを超えた要求をされていた。
だが、そこから逃げなかった、ONの幻影と真っ正面から常に戦っていた。
と言う印象が強い。
今回も、監督たらい回しの末、廻ってきたいわば貧乏くじ。
だが、それを逃げずに受け止めた。
批判も多かったし、混成チームの舵取りは難しかっただろう。失敗も成功もあっただろう。
そして、苦労してつかんだこの栄光。
「第2回WBC優勝監督」は、原辰徳監督ただ1人のものだ。
心から祝福を送りたい。


横浜ファンとしては、内川と村田の大活躍が喜ばしかった。
村田の負傷は悲しいが、こればっかりは仕方がない。
去年首位打者となった内川だが、それがまぐれではないことを証明した。
知名度も全国区になったであろう事は喜ばしい。


このWBCの余韻が醒めぬうちに、プロ野球公式戦が開幕する。
これまで共に戦ったWBC出場選手も、それぞれのチームに分かれて戦う。
願わくは、WBCをきっかけに初めて野球の面白さに目覚めた人たちが、WBC選手が出る公式戦にも興味を抱き、
日本プロ野球のファンにもならんことを。